フラワービジネス最先端
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2016年9月26日
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多賀城フラワー[宮城県多賀城市]
“ありがとうの花を咲かせよう”花屋を経営する傍ら、行政の評議員や地元経済団体の理事職など様々な公的役職に就きながら地域貢献活動にも積極的に取り組まれているのが、宮城県の多賀城フラワーの鈴木貴資さん。「ありがとうの花を咲かせいよう!」をスローガンに掲げ、徹底した地域密着型の経営について、お聞きしました。
スタッフの集合写真
[Q]多賀城フラワーの沿革や特徴を教えて下さい。
1965年(昭和40年)専業農家であった創業者である鈴木清資が、シクラメン・パンジー・菊等の花の生産をはじめました。その後1970年(昭和45年)COOP多賀城店に併設した「多賀城フラワー」第一号店を開設し、生産農家から小売業に業態変換しました。現在の店舗は多賀城市内に2店舗、仙台市内に1店舗を展開。法人取引としては日本三景で有名な松島にあるホテルをはじめ4社と契約を結び婚礼部門を設置。また地元葬儀社3社と契約しての生花祭壇装飾部門、観葉植物のリース・メンテナンス部門、量販店向けのパック加工部門と幅広く事業展開をしています。
[Q]現代表の鈴木貴資さんは何代目になるのでしょうか?
私の祖父が始めた花屋ですので、昨年創業50年目を向け、私で三代目となります。本年3月には1年遅くなりましたが「創業50周年を祝う会」を執り行い、関係各所総勢約250名で祝賀会を開催させていただきました。祖父や父親の代までは所謂「さんちゃん経営」で、家族とパートさん数名で小売専門の典型的な家族経営でした。私にバトンを引き継いでから法人需要にウェイトをシフトし事業展開して参りました。社員さんの頑張りのおかげで各部門ともに安定的にお仕事がいただけるようにもなりました。
月の一度の社内レクレーション
[Q]多賀城フラワーさんのスタッフは非常にイキイキとしているように見えますね。
花き業界は1997年のピークを堺に下降の一途をたどっています。私どもはこれからも花屋として生きていかなければならないし、これからも花の魅力をもっと多くの人にお伝えしていきたい。そんな強い思いの中で、これらを達成するためには私の力なんぞたかが知れていて、結局は実際その取り組みを日夜精進してくれている“スタッフ”がすべてだと思っています。スタッフにエンパワーメントし決済権や裁量を大きくして仕事を任せる。スタッフ一人ひとりの個性を活かした組織を構築すること。スタッフがイキイキとして前抜きな気持ちで仕事に従事してくれた結果が売上げとして現れる。だからこそスタッフ一人ひとりのコミケーションがスムーズに行われるように、毎月何かしらの社内行事を開催しています。歓送迎会やボウリング大会、釣り大会、BBQなど毎月部門ごとに順番制で幹事役を担い、余興も含めた楽しい会になるように企画しております。お客様に喜んでいただきたいなら、まずは自分たちがお客様に対し喜んでいただくような下準備を行う。その下準備をとおしてスタッフの個性と人間力を磨きながら、お客様から支持されるような人間になれるよう取り組んでおります。
[Q]多賀城フラワーとして大切にしているポリシーを教えてください。
社外的には「地域で必要とされ続ける花屋であること」、社内的には「自己成長ができる花屋であること」を大切にしています。創業以来、本当に多くのお客様のご支援によって今日まで事業を続けることができました。これかも弊社の商圏地域に対してはスタッフ一丸となり、花屋業の傍ら地域のさらなる発展を目指すべく様々な社会的貢献活動に社を挙げて取り組みながら、花とみどりの魅力をお伝えしていきたい。一方で社内的には自己成長ができる機会提供、社内外研修やセミナーを通し、学ぶことの楽しさや自己成長を実感し人間力を高めてほしい。贈る方と贈られる方の気持ちのバトンリレー者として誇りと技術でお仕事させていただけることを胸に刻み、これかも精進していきます。
人気のオリジナル商品
[Q]宮城といえば多賀城フラワーと言っていいほど、業界内でも御社の名前は浸透していますよね。
同じ地域内には、当社と売上が同規模かそれ以上の花屋さんは結構あります。それでも、地域の方々、業界の方々から「多賀城フラワーさんが一番」とよく言って頂ける。本当に光栄なことだと思います。何が良いかといえば、一つ一つの取り組みが評価されていることだと思います。仕入れに関しても仙台市場以外にも大田市場(東京都)や時には豊明市場(愛知県)からも仕入れます。どうしても1つの市場にこだわると隣近所の花屋と商品が同一化してしまい、個性も生まれにくい。また水揚げに関してもいち早く日持ち性向上対策品質管理認証制度の小売部門を取得し、1秒でも花持ちが良くなるように自助努力をしています。採用に関しても地元の幼稚園・小中学・高校・専門・大学と常に連携を取りながら職場体験およびインターンシップを積極的に受け入れ、毎年新卒採用を行っています。今ではパートさんは1人もおらず全員正社員登用で勤務していただいています。また日本全国どこであろうと各種展示会や業界のセミナーにスタッフと共に積極的に参加することで、その場所、その時間、その空間を一緒に共有し、同じ共通認識・共通の課題を持つことで次のステップにスタッフ全員で取り組めるようにしています。
[Q]「スタッフへの仕事を任せる」と仰りましたが、現場とのコミュニケーションに苦労はありませんか?
弊社は半デジタル、半アナログで情報共有しています。デジタルの部分は日報及び社内の報連相や稟議は、組織内の情報共有やコミュニケーションを支援するソフトウェアを導入、お客様の見積もりや名刺もクラウド上で管理し、どこからでも情報共有できる環境を構築しています。ただし、お客様の個人情報はオフラインシステムを専門業者に依頼し、会社にサーバーを立てて外部からのアクセスができないようにセキュリティを強化した対策を取ってあります。一方のアナログの部分は部門内の報連相はどうしてもメモ書きの方が時間的に早いので業務連絡指示書という用紙でやり取りを行っています。
法人様向けのパンフレットは多数用意し、様々な画面に応じて使い分けている。
[Q]法人営業に関して、かなり力をいれられている、とお聞きしました。
私の代になってから法人営業に力を注いできました。代表になってから10年以上経ちますが当時面白いことに飛び込み営業や提案営業をしている花屋さんがまわりではどこもなく、法人様に割と話を聞いてもらいやすかった印象があります。また小まめにお手紙を送りするなど、いわゆる営業の王道を積み重ねてきたおかげで契約に漕ぎつけていくことができました。今では一度注文頂いたお客様へは、昨年の注文実績を月ごとにデータを抽出しメール配信やDM郵送を仕組化した営業活動に繋げています。振り返ると結果的にはこれは大きく成果を上げていますね。
[Q]ホームページもしっかりとされていますよね。
ホームページにセンスの良さを感じられなければ、「お店の商品もセンスないんだろうな」と思われてしまう時代です。facebookに投稿する画像も見栄えが良くセンスが良いと思っていただけるように工夫しています。そこからご注文を頂けたり、お店に実際にお邪魔したいので道順を教えてください、などの問い合わせが多いです。法人客ですと企業理念や沿革、取引先などを確認した上で問い合わせをいただき、そのまま注文に繋がります。ただネット販売は既に数あまたある花屋のネットショップに参入しても、ネット販売におけるコレという強みが未だ見出だせていないので模索中です。
植物に合う器にも拘っている
[Q]デザイン性のある観葉植物に力を入れているそうですね。
情報化社会になりネットで東京のど真ん中で流行している最先端のデザインを、お客様はSNSなどですぐに検索する事ができます。我々花屋としての課題でもありますが、植物のプロである我々がオシャレな植物を取り扱わず、アパレルショップでオシャレな観葉植物がディスプレイされていて、さらには販売もしているという時代。我々がきちんと花とみどりのプロとして最先端のトレンドを把握し、むしろ自分たちがトレンドを創っていきながらお客様にご提案していくことで、このお店にいけばオシャレな植物が手に入る、植物のプロショップだという認識を得ることができ、自社のブランディングにも繋がります。定期的に八丈島や指宿、沖縄から仕入れますが、植物にとって東北は冬越しすることが困難です。しかしそこを乗り越えることで自社のノウハウが蓄積され、より良い情報をお客様に提供できる当店の強みとなっています。
今流行の多肉植物やテラリウム
[Q]今後の展望をお聞かせください。
これまで同様に地域のお客様に愛される企業を目指していきます。そのためには積極的な地域貢献も必要ですし、スタッフの人間力を高めながら新しい取り組みにもどんどんチャレンジしていかなくてはなりません。今現在模索していることがハイセンスな園芸事業と飲食事業です。観葉植物の知識が豊富なのでオシャレでハイセンスな園芸ショップも面白いかなと思っています。それと飲食事業、花の国協議会の仲間である青山フラワーマーケットさんやヌボー生花店さんも飲食事業にのりだしました。花とみどりを眺めながらの空間を演出し提供することでその地域のコミュニティーの場を形成する。その空間に人が集えばより多くの人に花の魅力をお伝えすることができますし、花文化の継承とこれからの花文化を創造し発信していくことができると感じております。私、鈴木貴資は微力な人間です。しかしながら花の国協議会でこれからの花き業界の時代を切り拓くスピード感あふれるたくさんの仲間に恵まれました。その仲間からご指導いただきながら、そして弊社スタッフとともに成長し続けながら自分たちの限界へともにチャレンジしていきたいです。
(写真=鈴木貴資、インタビュー・文=山﨑年起)
多賀城フラワー- 多賀城フラワーのインスタグラム
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